【短編集】  Blue moment

episode2

「ねぇっ!真悠(まゆ)見てみて!あっちでショーが始まったよー!」



無邪気にはしゃぐのは親友の奈々(なな)



「奈々、ちゃんと前を見ないと転ぶぞっ!」

(ゆう)くん、大丈夫だよー!それより早くおいでよー。」



今日は私たちが通う高校の創立記念日で学校が休みなので、クラスの仲良し4人組で休日はアトラクションが激混みの遊園地に遊びにきていた。



「真悠も足元の段差に気を付けてね。」

奏多(かなた)ありがと。」



物静かな奏多と2人でゆっくり先に行った奈々と悠の後を追った。







「奈々ってば、こんなに悠にばかり絡んでたら悠の事が好きなのバレバレだね。」

「あぁ。恋愛に(うと)い僕でも何となくわかるよ。」

「悠は奈々の事どう思ってるんだろ…。他に好きな人いるのかな? 何か聞いてる?」

「……それは僕の口から言う事じゃないからな。でも、真悠が感じるままで合ってると思うよ。」





そう言って、クシャっと笑う。








「なんか…、奏多は大人だね。」

「そう見える?」

「うん、いつも落ち着いていて大人っぽく見えるよ。」

「そう見えてるなら良かった。」

「え?」

「実際はそうでもないんだよ。」

「へー、そうなんだ。彼方の子供っぽい姿、いつか見てみたいな!」

「…僕は恥ずかしいから見せたくないよ。」





先程と同じようクシャっと笑う。








「もぉっ!2人ともこっちだってばー!」





奈々が空いてるスペースに来るように促す。


ショースペースは既に満員で後ろの方から立ってみるのがやっとだった。






一日中歩き続けた足では立っているのもツラいし、日も傾き冷え始めた。






すると…。








スッと後ろから腰のあたりに奏多の両腕が伸びてきた。









「こうすると暖かいよ。」








後ろから奏多に抱きしめられている。








「ねぇ。さっきは何で悠の好きな人しか気にしないの?」



「…えっ。だって、奈々と悠のことが気になっただけで…。」









「僕の好きな人は気にならない?」




耳元で囁かれるとゾクゾクっとした。







「なんで…、そんなことを聞くの?」







「僕は真悠の好きな人が気になって仕方がないから…。真悠はどうなんだろうって、あれから考えてる。」









「今も真悠に触れたくて我慢できないでいる。」








「ひゃっ!」





奏多は首筋にそのままキスをした。








「ね。大人じゃないでしょ。」








「奈々と悠が仲良くする度に、僕も真悠イチャイチャしたくて堪らなくなる。」









ゆっくりとだが、会話をしながら肩や鎖骨へとキスの数が増えていく。







「真悠…。好きだ。」







耳元で切なく恋われる。







突然の告白に驚いて振り返ると、奏多の唇が私の唇に触れた。








「あっ!2人ともキスしてる!!!」


奈々が気付いて声を上げる。


「なんだよ、お前らいつの間に!!」


奈々の声に気付いて悠にも見られてしまった。









「たった今、真悠に告白したところ。」


少し照れたように奏多は2人に言った。








「「えっ!?」」


2人は驚いて私を見た。










「真悠、返事を聞かせて。」




真剣な眼差しで奏多に見つめられる。




「……わたしも、奏多が好き。」






奈々と悠の2人の前でこんなこと言わせるなんて恥ずかし過ぎる。









「2人とも聞こえた? 真悠は僕のこと好きなんだって。」




奏多は満足そうにクシャっと笑った。





「聞こえた聞こえた!」


「おう、ばっちし聞こえたぜ。」











「真悠が子供っぽい僕を見たいって言ったんだよ。」







この日、2組のカップルが誕生した。





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