私は普通の恋がしたいだけ
のんびりと夏休みを満喫して、明日からは学校

龍治さんとは、顔合わせ以来会っていない

でも毎日、夜になると電話がかかってくるし

朝起きたら、おはようってメールがはいってる

今も、龍治さんからの電話を待っている


『♪~♪~』

セットした目覚ましがなる

朝になってしまった…

昨日の夜、待っても待っても龍治さんからの電話はなかった

朝はメールが来るかもしれない

そう思って、制服に着替え、ご飯も食べて

学校に行く準備をして、スマホを見る

それでも、何の連絡もない

なんで?

何かあった?

ふと頭の中に不安がよぎる

まさか、怪我でもした…?

考え出したら、不安に襲われて龍治さんに電話を掛ける

電話は繋がらない

[心配です見たら、すぐに電話ください]

メールを送って、学校に行った

授業中も肌身離さずスマホを持っていたけど、連絡は来なかった

放課後、いつもなら迎えの車でそのまま家に帰るのだが藤堂組に寄って欲しいと言った

運転手の子は確認しますと言って、車を出て誰かに電話をかけ始めた

電話が終わりすぐに車に戻ってきた

「お嬢様、すいません
許可が降りませんでした」

「そう」

なんとなく、わかっていた

家で大人しくしておくことしか出来ない自分をすごく無力に感じた

スマホを握りしめて、布団を被る

『コンコン』

「お嬢様、体調が優れないんですか?」

上田さんが入ってきた

「…」

「お昼御飯、全然召し上がられてませんけど、お腹空いてませんか?」

きっと、私がお弁当に手をつけずに出してしまったからだろう

「大丈夫、」

「お夕食はどうされます?」

「いらない」

龍治さんのことで不安で不安で、食欲も湧かない

「お粥作りますから、それだけでも食べてくださいね」

上田さんはそう言って出ていった

上田さんに心配かけて、何やってるんだろう


でも一昨日の夜に電話したときはまた、明日も電話するって言ってたのに、

無事かどうかだけわかればいいの

私以外の女の人を好きになって捨てただけなのかもしれない

それでも、許してはあげないけど

無事なら別にそれでいい

[私と結婚したくなくなったなら、それでもいいです
だから、無事かどうかだけでも教えてください]

そう、メールを送った

「お疲れ様です」

家の外からそう聞こえる

お父様が帰ってきたんだ

お父様に聞いたら、何かわかるかもしれない

そう思い、走って玄関まで行く

「お父様!」

振り返ったお父さんは…血だらけだった

「小雪!」

「怪我は?」

「大丈夫だ」

大丈夫じゃない、脇腹からどんどん血が出ている

「ウソつき…」

「お嬢様、組長の治療をしないといけないので、」

右近さんがお父様を支えながらそう言う

右近さんの腕からも血が出ている

私はうなずくことしか出来なかった

そのあとすぐにお医者様が来た

お母様は、「大丈夫よ」そう言ってたけど明らかにいつもと様子が違う

治療が終わり、お父様の心臓がちゃんと動いてるのを確認して部屋に戻った

まだ龍治さんからは連絡が来ていない

泣きたい訳じゃないのに、涙が止まらない

泣き止んで、お風呂に入った

鏡に写ったのは腫れ上がって、赤い目

氷を貰いに下に降りた

「…」

玄関から廊下にかけてさっきまではなかった血

床が血だらけになっていた

お父様の部屋に行くと、右近さんが部屋の前に立っていた

「お嬢様、」

「お父様は?」

「寝ておられます」

「お母様もいる?」

「はい」

「2人とも生きてる?」

「はい」

「そう、ならいいわ」

生きてるなら、それでいい

きっと、普通は怪我をしただけで大事にするのが普通

でも、私は裏の世界に慣れすぎたみたい

怪我をするのが当たり前、朝元気に家を出たのに帰ってこないかもしれないのが当たり前、いつも命を危険にさらされてるのが当たり前の世界

やっぱり、普通にはなれないみたい

大広間に行くと案の定

怪我人がそこらかしこにいる

いつもなら、皆で楽しくご飯を食べているはずなのに

「お嬢様、」

「みんな生きてる?誰も死んでない?」

「…はい、」

良かった

「誰にやられたの?」

「…」

「言えって言ってんの!」

私の叫んだ声にビックリしている

いつもは大人しく何も知らずに守られてるお嬢様をしてるからきっとこんな声が出るなんて思わなかったんだろう

「みず「教えられません」」

誰かが言おうとしたとき、谷口さんが遮った

谷口さんは右近さんと同じく父の側近だ

「うるさい!」

「小雪!しっかりしろ!」

谷口さんは私に銃の扱い、護身術、自分の身を守る術を教えてくれた人だ

だから、誰がやったかわかった私がその組を潰すために暴走するのもわかってる

1度だけ、暴走したことがある

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