愛しのディアンヌ
「ああ、決めたよ」

 子供のように拗ねてばかりだった。いつまでも、父の影から背を向け続ける訳にはいかない。新たな一歩を踏み出すべきなのだ。父への恨みと愛情は裏表一体なのかもしれない。

「ずっと迷っていたんだよ」

 言いながらディアンヌの肩を引き寄せ頬にキスを落として抱きしめた。

「財産なんて欲しくない。親や親戚とも話し合うよ。相続の問題が解決したなら何もかも上手くいくと思うよ。でもね、その前に作曲を完了しないといけない。さぁ、色々と忙しくなるぞ」

 相続に関する問題が解決したなら、ディアンヌに正式に結婚を申し込もう……。

 早く完成させたい。そして、ディアンヌとの生活を豊かにする為にもたくさん仕事をこなして貯金をしたい。

 今度のリサイタルが成功したらディアンヌに結婚をを申し込もう。この時の俺はそう考えていたのだ。
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