愛しのディアンヌ
「ええ、そうよ。私の探偵が、あなたの部屋に入って調べたのよ」

 まさか、まさか……。という思いが膨らんでいた。

「下宿に泊まった男が探偵なんですか」

「そうよ。あなたが何者なのか調べさせたのよ。日記があったようよ、ギョームも一緒に部屋に入って細々と調べてくれたの」

「何ですって」

「あなたが女の子だとルイージが気付く前に何とかしたかったのよ。脅せば、どこかに引っ越すと思ったのよ」

 ああ、そうだったのか。あれもルチアの陰謀だったのね。

「あんな危険な劇薬を使うなんてどうかしていますよ!」

「ちゃんと手加減するように指示したよ。その証拠に火傷は簡単に治ったでしょう? 殺す事も出来たのよ」

 眉根をギュッと寄せているルチアから歪んだ狂気が滲んでいる。

 私は、ひどく恨まれているらしい。

「バーティー会場であなた達は二人で消えてしまった。許さない。彼を誘惑したのね」

「していません。誤解です」

「私は、あなたからルイージを取り戻す方法を模索したのよ。薬剤師のあなたをの真似をしてみようかと思ったの」

 それで、孤児院であんなことをしたというの? 

「毒入りのチョコレートを、ルイージに送ったんですね?」

「ええ、そうよ」

 私は非難するように見つめ返す。嫉妬に狂うルチアの瞳は濁っている。

「だって、ルイージが悪いのよ。何度もあの人に手紙を送ったのに、いつも、私を無視をするんですもの。倒れたなら真っ先に駆けつけて看護するつもりだった。介抱の予行演習までしていたのに、生憎、孤児院の坊やがチョコレートを盗み食いしたのよね」

「ひどい人! ルイージの身体を痛めつけようとするなんて」

「すぐに回復する軽い毒だわ。その証拠に孤児の男の子もじきに元気になったでしょう」

「あ、あなた……。頭がおかしいわ」

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