愛しのディアンヌ
4 長老
「長老、説明して下さいよ! これは、どういうことなんですか!」

 ハァハァ。血相を変えて事務所に駆け込んでいた。ふざけるな。両手で机の天板をドンと叩きながら訴えていく。

「あなたが演奏を許可したんですよ! ルネが言いましたよ。あなたが密告したんですか!」

「興奮しなさんな。心配いらぬぞ。裁判が始まるまでに許可証を提出すればいいのだ。本当は百ルロイだが五十五ルロイで入手できるぞ」

「そんなこと無理ですよ。三ヶ月分の家賃と同じ額なんですよ。借金させる事が目的なんですか?」

「ああ、毎回、レビィーがいい客を連れて来てくれるのだよ」

「あの、まさか、レビィーもグルなんですか!」

 一瞬、頭が真白になる。まさか、そんなーーーー!

「今回はそうではないぞ。レビィーはおまえさんのことを褒めていたぞ。真面目で誠実で勉強熱心だそうだな。腹を割って話そうではないか。レビィーはおまえが女だと見抜いておるよ。おまえさん、名前はなんだね?」

 レビィーはグルでないと知ってホッとしたのだが、それしても、なぜ、長老は警察に密告をしたのだろう。なぜ、私の性別にこだわるのだろう。

「わたしの本当の名前はディアンヌですよ。学院には女子学生が一人しかいなので他の生徒に性別を隠しています。講師の方達は知っています。それが何なのですか!」

「おまえさんは男装趣味の異端者という訳ではないのかね?」

「もちろん、違いますよ!」

 この人は倒錯者を嫌っているのだろうか。まぁ、そういう人を弾圧する人はとこにでもいる。

「では、単刀直入に言うとしようかのう。実は、わしの娘のマリアは子宝に恵まれんのだ。おまえさんの知恵を借りたいのだよ」

 まさか、そういう難しい依頼をされるとは考えていなかった。

「お嬢さんはお幾つなのですか? これまでに妊娠したことがありますか?」

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