愛しのディアンヌ
10 パーティー
 マリアさんに手伝ってもらってコルセットを装着してもらったのだ。しかし……。

「短い髪じゃ、ドレスは無理ですね……」 

「鬘を用意しているわ。任せなさい」

 マリアさんとメイドさんの二人がかりで鬘を装着されて化粧も完了した。楕円形の豪華な姿見の前で驚いた。マリアさんが用意した鬘は私と同じ金髪である。昔の自分に戻ったかのようだ。

「御覧なさいよ。お粉をはたくと、肌がいつも以上に肌理細やかに見えるわよ。あなた、お人形さんみたいよ」

「こ、こんな素敵なドレスを貸していただいて申し訳ないです」 

「急ぎましょう。いつも、男の子の格好をして勉強ばかりしているんだものね。今夜は楽しむといいわ。ここだけの話、あなたのドレスは父の倉庫にあった古着なのよ。遠慮しなくてもいいのよ」

 今夜の宴は規模が大きいらしい。。我々を乗せた馬車は道幅の広い高級店が建ち並ぶ通りを軽快に進んでいる。マリアさんが言った。

「新聞社や出版社の人や記者も来るのよ。オルファ姉妹は社交界の中心人物なのよ。各国の王妃様とも懇意にしているの。経済界の人達との繋がりが深いの」

 三階建ての壮麗な邸宅の前には馬車が連なっている。

 老齢の執事が招待客の名前を読み上げている。玄関ホールの天井は高かった。見事な彫刻を施された天井の漆喰細工と楕円形の枠中に描かれた絵が荘厳な美しさを放っていた。豪華なシャンデリア。壁や柱の複雑な装飾。金縁の枠のついた大きな鏡。異国の宮殿に迷い込んだかと思わせ玄関ホールの壁は青い色のタイルが見事だ。豪華な邸宅の女主人のマルゴットと妹のオルファが微笑みながら出迎えてくれた。

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