愛しのディアンヌ
 ジョルジュと私が同一人物だと気付いていないようである。それは残念だが。銀行家や工場経営者達がルイージの後援者となってくれるようなのだ。マリアさんが言った。

『パトロンになってくれる方が家を用意してくださるわ』

『そうですか。それは素敵ですね……』

 あの時はそう答えていたのだが、物悲しさを抱えていた。ルイージはどこか遠いところに行ってしまう。もう会えなくなると思うと猛烈に寂しいのだ。

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