愛しのディアンヌ
「犯人が分からないまま君を放っておけないよ」

 そんなに思い詰めた顔をして何を言おうとしているのだろう。しばらく沈黙した。彼は真摯な眼差しで告げた。

「俺と一緒に暮らしてくれないか?」

 プロポーズ? 真意を問いたい。でも、勇気が無い。怖い。ドキドキしてしまう。

「俺の側にいてもらいたい。もちろん、永遠にという訳ではない」

 ああ、結婚の申し込みじゃないのね、

「あの、愛人とか……、そ、そんなの無理ですよ。学校がありますから」

 すると、彼は快活に言った。

「あはは。そうじゃないよ。学校に通ってくれたらいい。給金は支払うよ。おそらく、君の皿洗いの仕事よりも高い賃金を払えると思うよ。仕事に集中する為にも、部屋は綺麗にしておきたい。信用できる人を雇いたい」

 微笑みを湛えたまま遠慮がちに返事を待ってくれている。

「俺達は、きっと仲良く暮らせると思うんだ」

 私も側にいたい。だから、困惑しながらも決して誘いを断ったりはしなかった。

「よ、よろしくお願いします」
 
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