愛しのディアンヌ
13 ルチアの登場
「さて、行こうか。ディアンヌ。いや、今日は、男の子のショルジュ君だったよね」

 今日、孤児院のホールにて慈善チャリティリサイタルが開かれる。は、ルイージと共に外に出る際には男の子の格好をしている。秘書という事にしている。

 孤児院の教室が手狭になったので隣の敷地も買い取った。乳幼児の為の施設を建築する予定だが、、お金が足りないので資金集めの為のコンサートをするのだ。

 彼は、大勢に取り囲まれていた。

「ようこそ、ルイージ、お会いできて嬉しいわ。あなたの好意に感謝しますわ」

 伯爵夫人のロニア様がスピーチを開始している。私は、邪魔にならぬように会場の隅で佇むことにする。

「あのう、すみません」

 不意に、見知らぬ男性に声をかけられた。丸眼鏡の三十歳前後の男性だった。小さな声でボソボソと申し訳無さそうに言った。 

「あ、あのう、すみません。少し、お話したいのですが。あなたはルイージ様と懇意にされていますよね、ルイージ様の父上の秘書のデニーロ氏に依頼されてここに来ました。公証人のギョームと申します」

「ルイージのお父様……?」

「はい。これが委任状です。ここでは話せない話です。少し移動しましょう」

 ギョームから他所に移動するように言われたので回廊へと向かう。

 芝生の真ん中に噴水。中庭を囲む渡り廊下によって建物が繋がっている。礼拝堂、食堂、寄宿舎など複数の建物があるが、一番、寂しい場所か薬草園前の廊下の柱の陰という訳である。

 二人切りになると、学者のように神経質な面持ちのなギョームが用件を切り出した。

「単刀直入に申し上げます。ルイージ様のお父上の御容態が悪化しておられます。半年前に倒れられて以来、御子息に会いたいと切望しておられるのですよ」

「倒れた……?」

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