あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

彼がいない夜

「里穂、明日から一週間ほど出張に行く」

 ある日の夕飯どき、出し抜けに告げられ彼女は固まった。

「俺がいないと寂しい?」

 冗談混じりだったらしいが、里穂の表情を見て慎吾は真剣になった。

「……悪い」

 抱きしめられても抱き返せない。

 慎里も、気掛かりそうな父と表情を強ばらせた母を交互に見て何事かを察し、びくついている。

「俺も里穂や慎里の傍にいたいんだけど」

 慎吾は彩皇が稼働していないと、支配人というだけでは有能すぎるのだろう。

 第三秘書の妊娠が発覚した。ひとまず国内と第三秘書は彼女の夫である第二秘書に任せ、慎吾が隠岐と共に海外に飛ぶことになった。

 
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