あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜
 時折、里穂が恋慕の情に負けて慎吾に踏み出しかけるときがある。

 慎吾が迎え入れようと待っているうち、ハッと我に返ってまた自分の中に閉じこもってしまうのだ。

 歯痒くて仕方ない。

 だが、彼女が己の幸せに思いきって飛び込めないのは、施設育ちであるとか自分に家に放火したかもしれないという負の要素も影響している。

 ホテル学校を卒業して、昇進すれば彼女の自信になるだろう。

 自分を信じることができる人間は、困難に強いと慎吾は思っている。

 
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