あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜
「焦るつもりはないんだ、里穂……」

 けれど、彼女への愛情がどんどん溜まってきているのを感じる。
 マグマのように噴き出し口を求めて、ぐつぐつと熱く慎吾の体内を蠢いている。

 里穂にとって恋愛は、自分と出逢ったあの日が初めてだったのだろう。

 男として彼女に初めてを刻めたことは誇らしい。
 だが不慣れな分、どうしていいのかわからなくなっているのかもしれない。

 待てるよ、と男は微笑む。
 その笑顔は誰にも見せたことがないほど獰猛だった。

「だからって、いまさら逃がさないけどな」

 背中にキスをされて、まるで重力に惹かれる流れ星のように里穂に堕ちた。

 同じくらいには、彼女を自分に堕としてやると改めて誓う。
 
< 133 / 229 >

この作品をシェア

pagetop