あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜
 翌朝。
 清掃スタッフの深夜番と朝番が交代する際のミーティングで、リーダーから名指しされてしまい慎吾と自分のニアミスの理由がわかった。
 
「そういえば『岡安さんだけ個別ミーティング及び仕事の視察が終わってない』と、支配人から直々に連絡がありました」

 皆の視線が一気に集まる。

「岡安さん。支配人、今日来るって」

 リーダーに言われ、里穂は誰か替わってもらえないかと目を走らす。が、皆に目をそらされた。

 じっと同僚を見ていれば、あちこちからボソボソと呟く声が出てくる。

「支配人、すっごい厳しいの」
「私、『床を丸く掃いても効率化とはいわない』って言われた……」

「岡安さんなら大丈夫、見返してきて!」

 スタッフ全員から送り出されてしまった。

「どうしよう……」

 予想通り、チェックは厳しいらしい。
 それにしても困った。

 向こうは覚えていないにせよ、こちらはばっちり記憶がある。
 慎吾と会ったら、間違いなく挙動不審な反応をしてしまう。
 自身のせいで身バレしたら、今までのかくれんぼが水の泡だ。
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