あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜
「岡安さんは新オーナーが彩皇を買収した際の条件として、屋上の改造及び最上階のインペリアル・スイートを改築すると言う話は聞いていましたか?」

 彼女がうなずくと慎吾は説明を続けた。

 Rマークはレスキュー。
 緊急救助スペースとのことで、ヘリコプターが旋回して吊り上げたり吊り下ろすことが出来る。

 Hマークはヘリポートの意味で、許可申請を受けたヘリポートが離着陸出来る。

「彩皇の屋上はRマークです。新オーナーの要望はHマークの取得。これが簡単ではないことがわかりました」

 里穂は首を傾げる。

「たとえば我々の子供のように小さい子が飛び跳ねても、ビルには重量や負荷がかかります。これはわかりますか?」

 彼女はわかります、と答える。

 ……作業用エレベータに入り込んだ子供が飛び跳ねたので、監視センターが普段よりも揺れを感じとり緊急停止させたことがある。ついでに後処理が大変だったことも思い出した。

「慎里の何百倍も重たいものが屋上に降りたったり、飛び上がったりします」

 ようやく納得した。

 子供でエレベーターが止まるくらいなら、ヘリが離着陸するたびビルにかかる負担はどれくらいなのだろう。

「彩皇は、今のままではHマークに適しません」
< 92 / 229 >

この作品をシェア

pagetop