"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
「雪乃、お前が俺に近づくな。いい加減はっきりさせておく。俺はお前とは結婚しない。今のお前は、俺の視界に入ることさへ許さない」

有無を言わさぬ殺気を放ち、恭平は踵を返した。

「恭平!」

宝来が恭平の腕を掴む。

「すまん恭平。もしかしてと思って警戒していたんだが、間に合わなかった」

「だから部屋に戻らなかったのか?」

「ああ」

「これ以上あいつを見ていると、取り返しのつかないことをしてしまいそうだ。かと言って、このまま放り出せば何をするかわからん。神宮寺家に迎えをよこすよう連絡する。それまで雪乃を頼んでもいいか?」

「ああ、わかった。あとは俺に任せろ」

「すまん」

今にも破裂しそうな怒りを抑え部屋に戻る。
ソファーにドスっと腰を下ろし、全体重を背もたれに預けた。同時に大きく息を吐く。

恭平はすぐに雪乃の父親である神宮寺に電話を入れた。
神宮寺雪乃(じんぐうじゆきの)は、恭平の母、小百合(さゆり)の妹である茉莉絵(まりえ)と、現職国会議員で厚生労働大臣の神宮寺大佑(じんぐうじだいすけ)の一人娘だ。神宮寺大佑は、対話を重視する国民寄りの政治家で、次期総理大臣との呼び声も高い。
神宮寺は母方の姓で、恭平の祖父も国会議員だった。大佑は元々祖父の秘書をしており、祖父のお気に入りだった彼は、茉莉絵と結婚し、姓と地盤を引き継いだ。祖父が気に入っていただけではなく、茉莉絵の一方的な片思いを、愛娘のために強引に叶えてやったのだと言われている。
当時、大佑には恋人がいたのだが、茉莉絵との結婚の話が持ち上がると、その恋人は大佑の前から忽然と姿を消してしまったのだという。
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