"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
「恭平君か?」

「ご無沙汰しております」

「もう日本か?」

「はい、今神戸にいるのですが……」

「まさか、雪乃もそっちに?」

「ええ」

「そうか…… 帰国早々迷惑をかけて申し訳ない。私は今、地方公演で東京にはいないんだ。私の目を盗んで茉莉絵と結託したんだな」

「そのようです」

受話器の向こうから深い溜息が聞こえた。

「それで、申し訳ないのですが、誰かこちらに迎えをよこしてはもらえないでしょうか」

「勿論だ!すぐに秘書を向かわせる」

「申し訳ありません」
 
「謝るのは私の方だ」

「叔父さん、俺は、雪乃と結婚する気はないし、もともとそういった感情も持ち合わせていません。片思いですが、俺には想う人がいます。今日、雪乃は彼女を傷つけた。俺はもう限界です」

「恭平君……本当に申し訳ない」

「雪乃は宝来が見ています。あとは彼と連絡をとってください」

「あぁ、わかった。知らせてくれてありがとう」

通話を終え、恭平は再度溜息をついた。
疲労感が全身を支配する。

結局は、何の解決もしようとしなかった自分の責任だ。身から出た錆。フランスでは、雪乃に追いかけられることもなく平和に暮らしていた。所謂平和ボケとうやつだったのかもしれない。帰国したばかりということもあり油断していた。もっと注視しておくべきだったと悔やんでも悔やみきれない。
ストラップを拾い上げる彼女の震えた手が、恭平の胸を裂く。


絶望感に苛まれる中、胸ポケットの中でスマホが震えた。
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