"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
洸平から着信だ。

「もしもし」

「兄さん、お帰り」

相変わらずの穏やかなボイストーンが、平常を取り戻させる。

「ああ、イベントはどうだった?」

「うん、そのことで兄さんに聞いてもらいたいことがあるんだけど、今から部屋に行っていい?」

「俺は構わないが、迷わず来れるか?」

「え⁉︎ 僕、隣の部屋にも行けないとか、そこまで方向音痴じゃないよ!」

「あぁそうか、隣だったな。すぐにドアを開ける」

どうやら思考までやられてしまったようだと自嘲した。

部屋にやってきた洸平は満面の笑みを浮かべていた。だが、その表情が一瞬にして曇る。

「兄さん、疲れてるんじゃない?なんだか凄く顔色悪いけど」

「ん?まぁ、色々あってな」

「じゃあ、もう休みなよ。話聞いてもらうの東京に帰ってからでもいいし」

「いいや、構わん。お前の話なら大歓迎だ」

「あのね、あのね」

洸平は目を輝かせ、子どものような無邪気な表情を恭平に向けた。

「女神、女神がいたんだ!」

「ん?」

「女神だよぉ!」

「……女神って、あの女神か?」

「うん、あの女神。間違いない。イベントに来てくれてた」

「洸平、女神に会ったのはもう10年も前のことだろう。なのになんで女神って断言できるんだ?」

「確かめたから」

「確かめた⁉︎」  

洸平は大きく首を縦に振った。
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