"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
自宅マンションに到着し、恭平がエントランス前に車を停車させた。
ここまで送ってもらっておいて、そのまま帰すのも憚られ、お茶でも飲んでいきませんか?と声をかけた。

「気持ちだけもらっておく。正直まだ一緒にいたい。だが、このまま部屋に入れば、俺の理性はどこかに消えてなくなる。せっかくレベルアップしたのに、即ダウンなんて悲しすぎるだろ。今日はゆっくり休め」

真琴の髪を大きな手が優しく撫でる。
恭平は車から降り、助手席のドアを開けると、真琴の手を取り降車させた。

「恭平さん」

「ん?」

「ありがとうございました」

「どういたしまして」

「じゃあ、行きますね。気をつけて帰ってください」

「ああ、わかった」

真琴は微笑み、エントランスのドアへと足を踏み出した。

ちゃんと笑えてたかな、大丈夫だったかな…

そんなことを考えていると、突然胸が締め付けられるような苦しさを覚えた。

なんだろう、この感覚……

立ち止まりそうになったけれど、無理やり足を前に進め、自動ドアを抜けた。抜けた瞬間、胸の苦しさは消え、今度は寂寞感に襲われた。

私どうしたの?寂しいの?

自問自答しながら一目散に部屋を目指す。
玄関ドアを閉め、一人になり、寂寞感は益々広がっていった。
目を瞑ると、恭平の穏やかな顔が浮かび、大きな手の感触が蘇った。

真琴は自分の気持ちに思考が追いつかず、全身をサッパリさせようと浴室へ向かった。シャワーを浴びている間も、つい恭平のことを考えてしまう。

本当に私はどうしてしまったのだろう……

浴室から出ると、ソファーに腰を下ろし、おもむろにオセオンのスマホゲームを起動させた。
保存済みのストーリーを読み聴きながら、流れる声に耳を澄ます。
どこをどう聴いても洸平の声とは思えない。オセオンはやっぱりオセオンだった。

ストーリーが進むにつれ、あるワンシーンで真琴に衝撃が走る。
恋に落ちたオセオンが、別れ際、愛しいヒロインに対し、優しく語りかけ、髪を撫でるシーンだ。
先ほどの恭平と被って見える。
オセオンの自信に満ちた立ち振る舞いや、堂々とした喋り口調、大きな手でヒロインの手を包みこむ仕草、髪を優しく撫でる仕草、見れば見るほどオセオンそのものが、恭平に見えてきた。
オセオン=洸平よりも、寧ろ、オセオン=恭平ではないだろうか。
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