"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
素敵な時間に身を投じ、オセオンと直接話をした喜びがじわりと胸に広がる。
それにしても、何故あの質問だったのだろうか……
真琴は首を傾げた。
"人間"を排除してきた真琴にとって、オセオンが訊いてこなければ薄れてかけていた遠い記憶。

真琴が中学3年の5月、学校から帰宅すると、見かけない制服を着た男子学生が、川沿いに植えられた木の陰で身体を丸めていた。
観光地なので、修学旅行生だろうとは思ったが、周りには誰もいない。
もしかしたら、変な人かもしれないと、話しかけることに戸惑いを覚えていた。けれど、もし体調が悪く、そのまま取り返しのつかない事態になってしまっては後味が悪い。
真琴は学生鞄を盾に、最大限の警戒をしながら彼に近づいた。


呼吸が荒々しい。背中で息をしているみたいだ。

「あのぅ、どうかされましたか?」

顔を覗き込み、目にした表情は、顔面蒼白でかなり苦しそうだった。真琴は盾にしていた鞄を放り投げるよう手放すと、咄嗟に彼の額の汗を持っていたハンカチで拭い、背中を優しくさすった。

程なくして、呼吸が落ち着いてくると、真琴はもう一度声をかけた。

「大丈夫ですか?」

彼はゆっくりと頷く。

「立てますか?家、すぐそこなんです。お水飲んでちょっと休みませんか?」

「いいの?」

彼の囁くような声がゆっくりと耳の奥に沁み渡る。柔らかく心地よい声に気を取られてしまった。
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