"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
「ごめんね、貴重な時間を使わせちゃって」

「気にしないでください。ところでホテルはどこですか?」

彼は駅前の有名ホテルを告げた。

「先輩、私から離れないでくださいね。また迷子になりますよ」

「うん、わかった。なんか真琴さん、僕の保護者みたいになってる」

真琴さんと名前で呼ばれ、少々胸がくすぐったい。

「一緒に歩くの嫌ですか?」

「いいや、どうして?」

「なんとなく」

「安心する。なんだか凄く」

「え?」

真琴は立ち止まり、同じく立ち止まった彼の顔を見上げた。

「安心?」

「うん」

「それって、老けてるからってことですか?」

「違うよ。大人びてるってこと」

「同じでしょ」

彼がふっと柔らかい笑みを向ける。
あえて否定はしないんだなと、その潔さが清々しい。

「僕、年上なのに、真琴ちゃんって呼べない。真琴さんの方がしっくりくる。嫌かな?」

「いいえ、全く」

「よかった」

眼鏡の奥の彼の表情は、初めて声をかけた時とは別人のようだ。
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