"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
「座って」

耳元で囁かれ、全身の力が抜けてしまいそうになった。紳士的に促されては席に身体を預けるほかない。
真琴はそっと腰を下ろした。

真琴が着席するのを見届けてから彼も再度腰を下ろす。

「なんでも好きなものを頼むといい」

彼の言葉を合図として受け取ったかのように、インテリ眼鏡の男性がスッとメニューを真琴の前に差し出した。

「私は結構です」

「店に入って何も頼まないというのは失礼だと思うが」

確かにそうだ。曲がりなりにも商売人の娘。失礼なことくらい承知している。それでも早くこの場から立ち去りたいのだ。けれど、それは容易なことではないと判断した。
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