"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
高級感漂う入口を正面に、着替えてきて良かったと、真琴は自分を褒めてやった。

バッグからスマホを取り出し《専務》と登録した番号に発信すると、すぐに繋がった。

「着いたか?」

「扉の近くにいます」

「すぐ行く」

「はい」

電話を切り、スマホをバッグにしまうと、程なく扉が開いた。店の入口が醸し出す高級感に、全く引けを取らないオーラを放った彼が姿を見せた。真琴と視線が合うと、何故か動きが止まった。

「専務?」

「……」

「あのぉ…」

「反則だな」

「はい?」

「まさか、着替えてくるとは」

「あのままだと、お店に似つかわしくなくて、浮いてしまうのではないかと思いました」

「やばいな」

「え⁉︎ 私、何かやってしまいましたか?」

「ああ」

「え⁉︎」

真琴は何がいけなかったのかと、困惑の表情を浮かべた。

「その顔も反則だ」

「え?」

琥珀色の瞳が近づいた。

「専務?」

「恭平」

「え?」

「今はプライベートな時間だ。恭平でいい」

「それは…ム、リ、かと…」

「何故?」

色気のある低い声にたじろいでしまう。

「こ、恋人でもない方の、しかも、や、役員を……呼べません」

「だったら、俺を恋人にしろ」

「え⁉︎ また、突拍子もないことを…」

「突拍子もない?」

「はい」

「俺は本気なんだがな」
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