"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
奥のソファー席に連れてこられ、座るように促された。テーブルの上には、ワインボトルと飲みかけの赤ワインが注がれたワイングラスが置かれている。ワインボトルは真琴も知っている銘柄。
TAKAMIDOホールディングス アルコール部門の言わずと知れた名品だ。なかなかお目にかかれない代物。

「何か飲みたいものはあるか?メニューを持ってきてもらおう」

「専務」

彼がふぅと息を吐き「専務、か…」と真琴を見つめた。

「専務」

彼は、はぁ、と息を吐く。

「何?」

「私も、そのワインが飲みたいです」

「これ?」

「はい、そのワイン、うちの商品ですよね。第3級シャトー」

「ああ、そうだ」

フランスボルドー地方のメドック地区には、1級から5級の格付けが制定されていて、61のシャトーが格付けされている。最上位が1級。その最上位のワインが5大シャトーといわれ、世界的にも有名だ。
だが、この5大シャトー以外の格付けされたシャトーも、ソムリエ試験の受験者が覚えなければならないほどの名品であり、その中の一つであるワインが、今、目の前にある。

「先日、神戸にいらっしゃった時もワインをお飲みでしたが、もしかして、あれも?」

「ああ」

真琴が訊きたかったこと、二つ目を訊いてみることにした。
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