"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
「何故あの日、神戸にいらっしゃったのですか?」

「その質問に答える前に乾杯だ」

店員が持ってきた真琴のグラスにもワインが注がれた。そっと口に運ぶ。

「美味しい」 

「だろ?」

「はい、フルボディなのに、穏やかでまろやかな酸味だから、とても飲みやすいです」

ボディは、ワインのコク、重み、力強さ、渋みを表す。ライトボディ、ミディアムボディ、フルボディとあり、フルボディが1番濃厚で、重みのあるものになる。飲料業界に勤務して得た知識だ。

「ああ、まさにその通り。ついつい飲み過ぎてしまう」

「ホント、これは飲み過ぎてしまいそうですね」

「気をつけろよ」

「私は大丈夫です。酔いませんから」

「ホントか?」

「はい」

「自信満々だな」

彼は軽く鼻で笑うと、ワイングラスに口をつけた。

「よく勉強しているな」

「え?」

「これのことだ」手に持ったワイングラスを優しく見つめる。

「一応社員なので、経理といえど、ある程度の知識は持ち合わせております」

「さすがだ」

「専務は、ずっとフランス勤務でしたよね。このワインに携わっていらっしゃったのですか?」

彼はゆっくりと頷いた。そして、語りかけるように、彼は穏やかな口調で話し始めた。

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