"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
「君と出会ったあのホテルは、うちのワインを当初から贔屓にしてくれている。帰国したら挨拶をと思って訪れていたんだ」

「なるほど、そうだったのですね」

「エレベーターの扉が開いて、君の姿が目に飛び込んできた時、これまでに抱いたことのない感情が込み上げてきた。同時に、この女性は絶対に手放してはいけない、そう思った」

「そう思ってくださったのに、どうしてあんな意地悪をしたんですか?」

「そうなんだよ、俺もホント、何やってんだって、我ながら情けなかった。好きな女の子を虐める子どもかよ!って」

美しい面貌が自虐的な笑みで歪む。

彼のストレートな想いに、真琴の心はじわりと温かくなった。けれど、その想いには応えられない。応える勇気がない。
自分も、胸の内を正直に話して向き合わなければ失礼だ。

「専務、私は…」

「人間が嫌いか」

「えっ」

「君はあの時言っていた。俺の手を振り払った時、だから人間は嫌いだと」

「はい……」

「何故君がそうなってしまったのかはわからない。俺も、君の人間嫌いに輪をかけてしまったから弁解はできないが、もし、許されるのなら、君の心の中にできてしまった大きな壁を壊す手伝いをさせて欲しい」

自分でも気づかぬ間に、頬を温かいものが伝っていた。
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