"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
トレーニングウェアが、下げ続ける真琴の視界に入ったかと思うと、膝をつき、真琴の頬を両手で包み込んだ。ふわっととした笑顔で下から覗き込む。

「狼狽する姿も実に可愛い」

「からかわないでください専務」

「専務?」

「え?」

「レベルアップしたんだよな?」

「き、恭平さん」

「ん、よろしい」

頬に添えられていた手はそのまま両腕へと移り、真琴の身体をゆっくりと起こした。

「兄さん、早くシャワー浴びてきて」

「ああ」

「真琴さんは座って待ってて」

「洸平さん、私も手伝います!手伝わせてください」

「ちょっと待て!」

浴室に向かっていたであろう恭平が突然引き返し、洸平の頭に手を置いた。
 
「え、何?どうしたの?兄さん」

「今、こいつのこと、なんて言った?」

先ほどとは打って変わった厳しい表情が真琴に向けられる。

「え?」

「今、こいつのこと何て?」

恭平の手が、洸平の髪をぐしゃぐしゃにする。

「な、何すんの⁉︎」

「洸平さん、ですか?」

「はぁ?おい、洸平、お前、先輩って呼ばれてるって言ってたよな」

「え?そ、そうだよ。でも、この前神戸で会った時、先輩は卒業したんだ」

「卒業って何だよ!」

「僕たち、対等でしょって、名前で呼ぶことにしたんだよ」

「俺は聞いていない」

「うん、言ってないから………あっ!兄さん、もしかしてやきもち?」

「う、うるさい!風呂入る!」
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