「好き」って言ってよ！

「青葉様はこの通り、私と婚約破棄をしたいとおっしゃっています！

隣にいる彼女と結婚したいから私と今すぐ婚約破棄をしたいと！

いいですよね！？

お父様、婚約破棄をしてもいいですよね！？」

そう叫びながらグイグイと迫ってくる娘に対して、
「い、致し方あるまい…」
と、父親は答えることしかできなかった。

「好きな人同士を身勝手な理由で引き裂く訳にはいきませんもんね！

好きな人同士が一緒にいることが１番の幸せだと、お父様はいつもおっしゃってましたもんね！」

父親は何も返すことができないと言うように、奈帆から目をそらした。

「ちょっ…ちょっと、奈帆ちゃん…」

父親と娘の間に立っている哲郎は先ほどと同じようにオロオロとしていることしかできない。