地味系男子が本気を出したら。


程なくして、男の子のお父さんが迎えに来た。
男の子は泣きながら抱きつき、お父さんも良かった良かったと抱きしめ、何度も僕たちにお礼を言ってくれた。


「よかったわね」

「うん!でもごめん、もう始まっちゃってるね…」

「いいのよ。あの子が無事にお父さんと会えてよかったわ」

「そうだね」

「…大志は子どもにも好かれるのね」

「そうなのかな?
僕も初めて兄さんにフェス連れて行ってもらった時、迷子になったんだよね」

「そうだったの」

「だから、ほっとけなくて」


あの時はもう6年生だからって、絶対泣かないって思ってたけど、兄さんの顔見たら安心してちょっと泣いちゃったんだよね。


「さ、もう少しだけど行こっか」

「そうね」


ここからはメジャーデビューしている人気バンドの登場だから、人もかなり集まってるし盛り上がり方も格段に違う。
僕たちは腕やタオルを振り回し、大声で叫んでとにかく盛り上がった。

会場のボルテージは最高潮。
燃え尽きるまで騒ぎまくった。


「今日は本当に楽しかったわ!誘ってくれてありがとう」

「僕も誘ってよかったよ」

「お兄さんにもお礼言っておいてね」

「わかった」


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