地味系男子が本気を出したら。


会場を出る途中、偶然あの男の子と再会した。
お父さんに手を引かれているその子は、僕たちに気がつくとヒラヒラと手を振ってくれた。


「気をつけてね!」


僕も笑顔で手を振り返す。
お父さんも気づいてくれて、ペコっと会釈してくれた。

最後にすごくほっこりする思い出ができたな――。


その帰り道、二人ともかなり燃え尽きたせいで帰りの電車は爆睡だった。
危うく乗り過ごすところだったけど、何とか気づけて無事に最寄駅に到着した。


「今日は本当にありがとう。家まで送ってくれて…」

「ううん、僕の方こそ急だったのにありがとう」


それじゃあおやすみ、と踵を返そうとした時――、


「待って!!」



桃に呼び止められた。



「何?」

「私…っ、



大志のことが好き…!!」




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