地味系男子が本気を出したら。


大志と二人の時間も大切にしたいけど、これまで通り三人で遊ぶ時間も大切にしたい。
これは大志も同じ気持ちだった。

そもそも私たちの縁を作ってくれたのは咲玖みたいなところあるしね。


「…あとは咲玖が自覚すればね」
「それは長期戦だろうねぇ」


もう少し咲玖の面倒は私たちで見ておくから。
九竜、早く帰って来なさいよ、マジで。


「あっヤバい!始業式始まる!」
「早く行かないと!」
「走るわよ!」


遅れてバタバタと体育館に入った私は、先に来ていた常盤くんと目が合った。
ズキっと胸の奥が痛む。

常盤くんのことは、校外学習の直後に正式にお断りさせてもらった。
あの時にはもう、大志のことが好きだと自覚していたから。


「…好きなのに告白しないの?」


常盤くんにそう言われ、私は何も言えなかった。

すぐに告白できなかったのは、自信がなくて臆病だから。
そんな私に大志はいつも真っ直ぐ想いを伝えてくれて、優しく微笑みかけてくれた。

大志と過ごす時間は、驚くほど楽しくて心地よくて。
あんなにずっと笑い合える相手、他にいないと思う。

あなたのことを知る度に、どんどん好きになってもっと一緒にいたいと思うようになった。
あなたの隣にいるのは私がいい、私だけがいい。

今までのウジウジしていた臆病な気持ちは全部吹っ飛んで、大志を求めていた。


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