婚活
和磨も若いな。人の事は言えないけど。年子の私達は、中学と高校は1年だけ一緒じゃないだけで、殆ど同じ校内に居たから廊下で顔を合わせる事も多くて、部活をやっていた裕樹と和磨は、親より一緒に居る時間が長いんじゃないかと思うくらい、常に一緒に居る事が多かった。あの頃と何も変わってない気がするけれど、私達は大学に進み、社会人になって、それぞれ自分の道を歩き始めている。裕樹は機械いじりが好きだったから、それを生かす職に就いているし、和磨は教師になる夢を、もうすぐ叶えようとしている。そして私は……。私は何をしているんだろう。漠然と結婚したいと思ってはみたものの、大切な事だから、無理に結婚しようとまでは思ってはいない。だが、将来的な事を考えると、やっぱりこのままじゃいけない気がする。
はぁ……。やめ、やめ!
部屋の中を片付けるはずが、かえって散らかった感じだが、散らかっているものを適当に最後は棚に押し込み引き出しに入れて、簡単に掃除機を掛けて終了にした。
まだ10時か……。何か、1日が今日は長いな。気晴らしに買い物でも行こう。何を買うでもないけれど、取り敢えず出掛ける準備をして家を出る。
「買い物行ってくるね。夕方には帰るから」 
「気を付けて行きなさいよ」
母親といつもと変わらぬ会話を交わして家を出ると、太陽の眩しさが目にしみた。本当だ。 天気予報で言ってたとおり、絶好の行楽日和だよ。雲一つ無い良いお天気で、きっと紅葉も綺麗だろうな。見上げた街路樹はまだまだ紅葉には遠く、紅葉前線は私の住んでいる街まで下がってくるには、もう少し時間が掛かりそうだった。和磨の家に曲がる路地に差し掛かる。主のいない二階の窓を見上げた。今頃、もういつもの場所だったら、もう着いてるはずだから、紅葉見ながら楽しんでるかな。
うわっ。
何?こんな女々しい事、考えてるんだろう。根暗街道まっしぐらジャン。和磨の部屋から 視線を慌てて前に戻し、駅に向かって歩き出した。何処に行こう……。冬物のジャケットでも買おうかな。表通りに出ると、前から誰かが歩いてくるのが見えた。
エッ……。
和磨?
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