婚活
仰向けに寝ていた和磨が、右手で手枕を作りこちらを見た。
「そのパソコン、何時壊してやろうかってさ」
「な、何でパソコン壊すのよ」
たまに、和磨の思考回路が読めなくなる。
「だって、珠美はそこで男探してただろ?」
和磨……。
「あのサイト、まだ見てるのか?」
「も、もう見てないわよ。会員登録も解約しちゃったもの」
「でも、まだパソコンのお気に入りに入れてるんじゃねぇの?」
確かに消さずにそのままになっている。
「は、入ってるけど、でももう見てないわよ」
「怪しいなぁ……。まぁ、いいか。珠美。着替えて出掛けるぞ」
「えっ?何処に?」
「いいから、早く着替えて降りて来いよ」
和磨はベッドから起きあがると、部屋を出ていき階段を降りる音が響いていた。何処に行くんだろう?取り敢えずいつも休みの日に出掛ける格好で下に降りていくと、和磨が玄関で待っていた。
「お邪魔しました」
「はぁい。和君。今日はありがとうね。凄く嬉しかったわ。これからも、いつものようにまた来てね」
「はい」
和磨はお母さんに言われて少し照れているのか、苦笑いを浮かべていた。
「行ってきまぁす」
いつもと違う気分で玄関を出た。
「和磨。何処行くの?」
「俺はこの道を、何度通ったのかな」
「えっ?」
「子供の頃、何度、珠美が泣きながらこの道を通ったんだろうな」
嘘……。
和磨は私が子供の頃、泣き虫だった事を覚えている。
「大人になっても、この道を泣きながら珠美はよく走ってたよな」
向こうの大通りに続く道。その途中に和磨の家があって……。
不意に和磨が私の手を握った。隣りに居る和磨を見上げると、和磨も優しい眼差しで私を見ながら静かに微笑んでいるのがわかる。
「うちの親にも報告に行こう。有終の美を飾れよ?珠美の婚活も、今日で終わりだ」
婚活も、今日で終わりって……。
「珠美。結婚しよう」
「はい……。ありがとう……和磨」
和磨の家への道を、何度通ったことだろう。
春まだ浅い三月。もう一度、和磨に出逢えた私の婚活は終わった。

巡り逢う、縁(えにし)を大切に。


「婚活」 完。
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