君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 会社名が入っているのにうっかりしていた。
 そのことに後で気づいたが遅かった。

 「いつでも、ご連絡ください奥様。すみません、今日はこれで時間がないので失礼します」

 そう言うと、会社へ急いでもどった。

 
 二週間後の週末、マンションに呼ばれていったときは、お母様が待っていて驚いた。

 あの粕漬けの店でお会いして以来だった。

 楽しみにしていたのよと満面の笑みで迎えられ、彼はあっけにとられている。

 それから、お母様の珠玉のピアノを聞かせて頂き、お昼を頂くと今度は連弾。
 
 最後は彼とお母様のベートーヴェンのバイオリンソナタを聴かせて頂く。

 本当に楽しかったのだが、全く彼とふたりになれなかったので、消化不良になった。
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