君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 「彼女を得る、得ないは実はどうでも良くなってきました。最近は彼女の顔を見ると匠さんの女だと思うだけで、冷めてきたし。単に、匠さんをやっつけたいだけですよ。兄さんも長年の恨みが溶けてすっとするでしょう」
 
 「すでに、さくらさんはウチの嫁なんだから関係ないと思うがな」
 
 「どうでしょうかね。匠さんにフラれて自殺未遂までした彼女を嫁にしたんだ。複雑でしょ、そりゃ」
 
 「……」

 
 弘は自室へ戻ると、遙に向き直った。
 
 「古川さん、来週からゴールデンウィークの休みに入るけど、君は実家に帰るの?」
 
 「いえ。今年は旅行に行こうかと思っています」
 
 「それはいいね。どこに?」
 
 「箱根の温泉にでも」
 
 「ふーん。誰と行くのとは聞かないで置こうか」
 
 「……」
< 150 / 274 >

この作品をシェア

pagetop