君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 「……あのね、いずれ言う。今じゃない。会社を辞めてとりあえず姿を隠すわ」

 「どうして?匠さんと一緒にいればいいじゃない。結婚すればいいんだよ」
 
 「副社長解任は周りを納得させるため。それに、海外に行くらしいから私はついていかない。反省しているという姿を堂本の他の役員に見せて、取引先にわかってもらうためにも、私が行ったらダメなの。私は元凶の秘書だったんだよ」

 「ねえ、遙は悪くないじゃん。おかしいよ?悪いのは取締役だよ。私が言ってあげる。社長に直談判してあげるよ」
 
 「実は、石井専務の奥様が私のことを心配してくれてる。退社したら実家の会社に入れてあげると言ってくれたの。でも、こんな身体だし、お断りするけどその代わり私を隠してもらう場所を紹介いただくつもりなの」

 「そんなことなら、うちの実家の会社を紹介するし、私がどこか探してあげるよ」
 
 「だめだよ。皐月の実家は直也さんとも親しいからすぐにばれちゃう」

 「わかった。どこに行ってもいいけど、私と連絡は必ずとってね。私に内緒でいなくならないで」 
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