君がたとえあいつの秘書でも離さない
「お母様、女の子でも男の子でも今度こそピアノをしっかり教えて下さい。匠さんは逃げ出したそうですけど、私の子はきっと大丈夫です」
「何だよ、遙。俺に喧嘩売ってんのか?」
「そうね。孫にはさすがに私も叱れないから、うまくいくかもしれないわ。匠にはちょっと叱りすぎたわね。あのときはごめんね」
「……母さん。今頃遅いよ。鬼のようだったよ」
「……そうですか。すみませんね。だって下手くそなんだもの」
「よく言うよ。自分の遺伝子組み込んどいて」
「そうねえ。まさか下手くそが生まれるとは思わないじゃない。悪いのは、全部この人の遺伝子だわ」