君がたとえあいつの秘書でも離さない
「今回の取引のことも、直也さんから何も聞いてないって言ってたわ。だから、皐月のことも自分で調べたって言ってた」
「そう。私も言ったのに。匠さんに話すべきだって。そしたら、俺の考えだから匠には関係ない。あいつにこの程度じゃ、傷にもならないって言うの。自虐的に。そういう関係なんだとその時理解したわ」
「問題は、原田取締役にもあるかもしれない。大学の同窓とか?」
「そう。私のことも利用して上手に話をもっていったみたい。参るわよ、本当に。一応これでも彼の秘書だし。逆らえない」
「恐ろしい仕事だわね。そう考えると」
「人ごとみたいに言わないで。遙だって、ライバル企業の次期社長候補と付き合ってるなんて知れたら、大変よ。守秘義務があるから、絶対反対される」
「……」
「だから、直也さんは言うなって言ったのよ。匠さんは私の会社名彼から聞いていたはずだし。遙に接触することは危険なことだってわかっていたはず。よく連絡してきたわね」
「そうね。言われて更に痛感してきた。私大丈夫なのかな?」
「迷うならやめなさい。まだ、傷が浅いうちに。こんなこと聞くのは野暮だけど、そういう関係になってしまった?」
「いいえ、まだ」
「なら、よく考えて。引き返せない道かもしれない」
「皐月は引き返せない道なの?」