君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 「……取締役。どうされたんですか?私のプライベートは関係ないと思うんです」
 
 「そうだね。この間言ったこと忘れた?僕の秘書なんだから気をつけてって。蓮見専務のような人に引っかからないようにね」

 どうしたの?本当に怖い。
 すると、後ろから「あの」と声がする。振り向いた。

 そこにいるのは、堂本コーポレーションの秘書室長だった。
 「お話し中すみません。古川さん、当社の社員から伝言を預かってまして、お部屋でお待ち頂きたいとのことです。ご案内させていただきます」
 恭しく頭を下げる。
 
 「石井コーポレーションの石井取締役でいらっしゃいますね?ご無礼申し訳ございません。私は、堂本コーポレーションの秘書室長の柿崎です」
 
 「知っているよ。で、ウチの古川さんを呼んでいるのは、そちらの役員なんだね?」
 
 「……それに関してはこちらではお答えできません。ご了承ください」
 
 「……ふーん。じゃあ、その役員の方にお伝えください。彼女は簡単には渡さないと」
 
 どういうこと?
 びっくりして弘取締役を見つめると、彼はニヤッと笑い私に言った。
 
 「この間の業界説明会。どうして僕に仕事が回ってきたのか、ちょっと調べたらここに行き着いたんだ。僕には心当たりがないからね、君かもと思ってちょっと探っていたんだけど。まあいいよ。古川さんも自分の立場を忘れるなよ」
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