君がたとえあいつの秘書でも離さない

 「口うるさい母でね。俺を心配しているんだろう。よく口げんかもするんだが、これが仲直りの秘訣ってとこかな。音楽の力は偉大だな」
 
 「うちなんて、甘いものを買ってきて食べさせれば母はイチコロです。ずいぶん程度が低い気がする」
 
 「それだって、お母さんの好きなモノを知っているから出来ることだよ。仲がいい証拠だ」
 
 「匠さんご兄弟は?」
 
 「俺は一人っ子なんだ。寂しいもんだよ。君は?」
 
 「弟がいます」
 
 「なんか、そんな感じがする。しっかりしてるもんな。わがまま言わなそう」
 
 「そういう匠さんはわがままですか?御曹司で一人っ子」
 
 「そうだなといいたいところだが、甘える相手がいなかった。実は母はピアニストだったんだ。ほとんど家にいなくて、世界を回っていた。海外にいた父と出会って結婚したが、拠点がヨーロッパだった母は俺を妊娠したことでキャリアが狂った。父は母を独り占めしたくて、ソリストを辞めさせたかったようだ。俺が生まれたことで母のことを独占できなくてさらにイライラしていた」
 
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