雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
倉内の携帯電話にすぐに電話をかけても繋がらなかった。ただ呼び出し音が流れ、留守番電話へと切り替わる。
仕事がすべての男だ。今も、社にいるかもしれない。とにかく、父と雪野に会う前にすべての事情を倉内から聞き出さなければならない。社へと急いだ。
社長室と同じフロアにある秘書室。薄暗いオフィスの中で、その部屋から明かりが漏れる。ドアを開くと、予想通り倉内が自分のデスクでパソコンに向き合っていた。
「――休みの日のこんな時間まで、熱心だな」
社にいる時は敬語を使っていた。でも、今は榊家を知る人間として向き合う。
「創介さんこそこんな時間に何か?」
顔色一つ変えない、心の内をまったくと言っていいほど見せない男だ。
「戸川雪野。この名前を知っているな?」
倉内の目の前に立ち、見下ろす。
『見合いに来なければ私が直接手を下す』
その父の言葉を鵜呑みにしていた。俺はとんだ大馬鹿だ。
父の用意周到さと絶対に他人に隙を与えない性格を知っていたというのに。
見合いの前にすべての状況を整え、確実にその日を迎えられるように手を打っていたのだ。
「……私の見込み違いだったかな。戸川さん、あなたに言ってしまったんですか」
冷淡な口調が、静かなオフィスに響く。
「まあ、いいでしょう。遅かれ早かれ知られる可能性があったのも承知の上です」
倉内が椅子から立ち上がった。
「雪野に一体何を言った!」
昂ぶる感情がこの声を大きくさせる。