雪降る夜はあなたに会いたい 【上】


「ただ馬鹿正直に事業をしようとは思っていません。根回しやコネクション、多少の駆け引きは必要でしょう。でも、それだけに頼って勝負には出たくない。最終的には、うちの商品の品質、企画の質、事業内容で成長させていきたい。そうでないと、必ずいつか綻びが出る。それを考えれば、この程度の額が妥当です」

企業規模が大きければ大きいほどその分社会的責任がある。最後は世間への信頼だ。甘い蜜で稼げても、いつかそれが表沙汰になれば、一気に信頼を失いブランドにも傷をつける。

 じっと父の目を見る。

 反論されるかと思った。でも、父は何も言わずに俺を見ていた。だから、そのまま俺の訴えたいことを続けた。

「――提示した損失額。それと同じだけの利益を私が達成できた時、その時は、彼女との結婚を認めてください」
「おまえ、正気でそんなことを言っているのか……?」

父が呆れたように俺を見ている。

 厳しい父を納得させられるだけの額。普通に考えて、二十代の社員が達成するのは至難の業だ。それでも、絶対に成し得て父を納得させたい。

「はい、大真面目です。それも、二年という期限を設けてください。こっちも、いつまでも時間をかけようとは思っていません」
「なに?」

父がその切れ長の目を見開いた。

「それは、丸菱にとってマイナスになる話じゃない」
「もし、その条件を達成できなかったら……?」

父の目に真っ直ぐに答える。

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