雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
「全てを捨てて、丸菱と榊の家を出ます。そんな能無し、丸菱にもあなたにも必要ないでしょう」
「一文無しになって、女を養えるのか? どこの企業が丸菱を出されたバカ息子なんか雇うと思う?」
そんなことを父が聞いて来るとは思わなかった。
「そんな心配はいりません。必ず達成してみせますから。いいですね、社長」
父は俺の出した条件に、許可も拒否もしなかった。
それがイコール許可だとは思わない。
でも、拒否でもないということは分かった。俺が本気だということを分からせる。
「では、仕事に戻ります」
あとはただひたすらに、訴え続ける。そして、言葉だけではなく、俺自身を見てもらうことだ。
父は、この巨大組織のトップにいる人間だ。何も言わず、ただ、俺の目を射抜くように見て来た。俺の腹の中までを覗くかのように。
絶対に本質を見抜くはず――。
俺がそう思いたいだけなのかもしれない。
でも父なら、この提案を無下にはしない。そう確信していた。
これで安心できるわけでもない。社長室を出てから、無意識のうちに大きな息を吐いていた。
この先、決して気を抜けない。
自分で言い出したことだ。何があっても達成しなくてはならない。父にとって一番大事なことは丸菱の利益だ。