雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
二年の月日が流れた。
見合いを反故にしたことの懲罰人事として、あれからずっと役職にはついていない。二年という時間と、それくらいのことをしなければ、宮川家に示しがつかないということだ。
俺にとって昇任は重要なことじゃない。大切なことは一つ。父と約束した利益を上げることだけだった。
そのために、決して環境がいいとは言えない現場でも躊躇うことなく飛び回った。
この二年のほとんどを海外で過ごした。発展途上国、新興国。それはどれも、大きなプロジェクトが動く場所だ。
出来ることはすべてやった。誰よりも泥臭く駆けずり回り、昼も夜も、立場も何もかも忘れてがむしゃらに働いた。やっと、ここまで来た。
この契約が決まれば、父と交わした条件を達成できる――。
インドでの、大型複合施設とそれに付随するすべてに関わる大事業だ。このプロジェクトのチーフとして責任を負っていた。
契約の交渉も大詰めを迎え、ほぼこちらの理想の形で契約を締結することが出来た。その瞬間、張り詰めたものが一気に身体から抜けていくようで、足元がぐらつきそうになった。
この二年、どれほどまでに気を張って生きていたのか。それを思い知る。
今頃、恐怖を感じるなんて――。
自分自身に苦笑する。
この二年、自分が父に放った言葉の困難さを深く考えていたらきっとやっていられなかった。ただ目の前だけを見てやって来た。
条件を果たした今になって、どれだけぎりぎりのところでやっていたのか実感する。
でも、今、こうして自分が立っていられるのは、雪野がいるからだ。あの柔らかな微笑みを目に浮かべて、表情までもが緩んで行く。