雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
帰国の前に、父に契約の報告をした。電話越しに言われた言葉は、『本当にやるとはな』だった。
それが父なりの労いの言葉なのだろうか。
そう思って苦笑していると、受話器の向こうで父が息を吐くのに気付く。
(――式の日取りを、倉内と相談して決めろ)
「……え?」
その言葉に反応できないでいるうちに、既に電話は切られていた。
それはつまり、雪野との結婚を許す――ということか。
その言葉の重みが、じわじわと俺の中で広がって行く。
条件を達成したところで、約束を守る義理は父にはない。許しを得られない覚悟もしていた。その時は、雪野を選ぶ。そう決めてもいた。
それでも。そんな結婚のし方よりは、皆に許されて結婚する方が雪野にとってもいいに決まっている。父が許したのだという事実が、心の底から俺を安堵させ喜びで満たした。
早く雪野に会いたい――。
離れた生活をしていて、もうずっと雪野に会っていない。この二年、どれだけ寂しい思いをさせただろう。
誰より俺自身が、雪野が恋しかった。
せめて声だけでもと電話をかけても、声を聞いたら聞いたでより会いたくなるのだからどうしようもない。
一緒に眠りにつき、共に目覚める。あの笑顔を毎日見ることができる。そんな日が来ることをずっと夢見てここまでやって来た。
思えば雪野が十八歳の時からの付き合いだ。五年――長かったようで短いような気もする。
今では、雪野も立派な社会人で。社会に出てから、雪野は見違えるように綺麗になっていった。内面から出る美しさが、表面にも滲み出て。大人の表情を時おり見せる。
テレビ電話越しで見る雪野が微笑むたびに、密かに目を奪われていた。そんな雪野を見ていたら、いつもどこか心に焦りがあった。
雪野の生きている世界で、雪野に惚れる男もいるだろう。
会いたい時に会えない俺なんかより、ずっと長い時間を共に過ごしている見ず知らずの男たちに勝手に嫉妬して。
どうして一番近くにいるのが自分じゃないのかと、誰に向けることもできない怒りを感じたりもした。
でも、ようやく、俺の元に来てもらえる。俺のものに――。
そのことを報告しなければならない相手がいる。それは、理人だ。