雪降る夜はあなたに会いたい 【上】


「何があっても雪野を選ぶと決めていた。でも、父も雪野とのことを認めてくれたよ。そして、理人も――」

こうして雪野に言えることに感謝する。

雪野を、幸せな花嫁にしてやりたい――。

その思いでここまでやって来た。

涙を溢れさせる雪野は、何も言わずにただこらえるように口元を押さえている。その涙が、これまで何も言わずにいた雪野の想いの表われなんだろう。

そう思うと、雪野への愛おしさが溢れる。
俺のために何も言わなかっただけで、心の中ではいろんな葛藤と闘っていたはずだ。

「……雪野、返事は?」

涙を見せまいと俯いて肩を震わせている雪野の、小さな頭をそっと撫でた。

「はい。よろしくお願いします」

涙を拭いながら、何度も頷いてくれた。
そんな雪野を抱きしめる。俺のすべてに代えても守りたいのは、雪野だけだ。

俺の宝物――。

そう思ったら、自然と抱きしめる腕に力が入ってしまった。

「せっかくの花束が……っ」

腕の中で焦ったような声が上がる。

「そうだったな」
「それに、ここ、職場の前です!」

この状況に思いが至ったのか。さっきまで涙をこらえていたはずの雪野が声を上げて身を捩るから、その身体を離した。

確かにここは、雪野の職場の前だった。

「いっそのこと、雪野は俺のものだって分からせようか」
「創介さんっ!」

気に留める様子を見せない俺に、雪野が抗議の声を上げる。

「悪かった、悪かった。雪野は恥ずかしがり屋だもんな」

夜でも分かるほどに顔を赤くしている雪野が可愛くて、ついからかいたくなるから困るのだ。

 雪野はいつまで経っても、すぐに顔を赤くする。そういう仕草が、俺の気をおかしくすることにまだ気付いていないのだろうか。
 雪野も自然とそうなってしまうのだろうから、仕方がないのかもしれない。だから、結局こうして俺に苛められるのだ。

「あ――創介さん、見て。雪です」

雪野が空を見上げる。

「ほんとだな」

雪野にならうように顔を空に向けると、淡い雪が降って来て。

地上へと落ちて来る雪を見つめる雪野の横顔を見つめた。



《雪降る夜はあなたに会いたい【上】完》

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