雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
「――雪野」
俺の姿に気付いていない雪野に声を掛けた。
「創介さん! どうしてここに? 待ち合わせの場所、違いますよね?」
目を丸くして、俺に駆け寄って来る姿につい顔が緩む。予想通り、驚いた顔で俺を見上げて来た。何度も瞬きをしている。
可愛いな――。
どうして、こうも俺の胸の奥を刺激して来るのだろうか。
「雪野を驚かそうと思って。この時間に合わせて迎えに来たんだ」
「え? じゃあ、飛行機の時間は?」
「本当の時間より少し遅めにして雪野に伝えたんだよ」
雪野の表情が驚きから笑顔に変わった。
「なんだ……。びっくりしました」
驚いた顔も、笑顔も、何もかも全部。
ひとたび雪野を前にすれば、この視線は全部彼女に注がれる。
今、目の前に立つ人を、どうしても俺のものにしたくてこの日まで足掻いて来た。
「雪野を迎えに来たかったんだ」
身長差のある俺を見上げる雪野を真っ直ぐに見つめ、そう言った。
「雪野……待たせて悪かった」
この二年、俺の我儘に付いて来てくれた。
待っていてくれた。そんな雪野を、何よりも大切にしたい。
「え……? 創介さんが迎えに来てくれたから、全然待ってなんか――」
俺の真意を分かっていない、雪野のきょとんとした表情に不意に胸が疼いた。たまらなくなって、雪野に花束を差し出す。
「どうしたんですか、これ……?」
今度は先ほど以上に目を見開いて驚いている。
雪野が躊躇いがちに花束を受け取って、薔薇の花を見つめる。こうして見ると、やはり白い花と雪野の姿はとてもしっくりと来た。
「やっぱり雪野は白い花が似合うな」
何がなんだか分からないと、雪野が俺を見上げる。
「雪野を本当に俺のものにするために、迎えに来たんだ」
躊躇いながらも大切そうにしっかりと花束を抱える雪野の手を取った。
「二年もの間、信じて待ってくれてありがとう」
驚いて俺を見上げていた瞳が揺れる。雪野は、何度も頭を横に振った。
「向こうで、重要な契約をまとめることが出来た」
「本当ですか? 良かった……」
雪野に詳しく仕事の話をしたことはない。
それでも雪野も俺の姿をずっと見ていてくれた。
心底ほっとしたように微笑んだのを見て、またも胸が温かくなる。
「それで、やっと雪野に言える」
雪野の指から指輪を抜き取る。二年前に渡した指輪。右手薬指にはめた指輪だ。
この二年、右手の薬指にはめられているその指輪を見ながら、早く左の薬指にはめさせたいと思い続けて来た。
「創介さん……?」
左手の薬指に指輪を滑らせる。
「雪野、俺と結婚してくれ」
その手を握りしめながら、雪野の目を真っ直ぐに見つめた。俺を見上げる目に涙の粒が浮かび、肩を震わせる。