雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
いつ終わるとも分からない関係は、年が明けても続いていた。
底冷えのするような二月。大学は春休みに入っていて、バイトのシフトを増やしていた。長期休暇はまとまった額のお金を稼いでおけるのだ。
母には、実際よりも多くバイトのシフトを増やしたと言っていた。そんな嘘をつくのは、正直辛かった。そうしてでも、創介さんに会う時間を作りたかったのだ。
この日は、数少ないバイトのない日だった。空はどんよりと厚い雲に覆われて、体感温度はかなり低い。次年度も授業料免除の認定がおりて、その手続きをするため大学に来ていた。
手続きを済ませて学生課のある棟から出ると、そこにユリさんが立っていた。あの日、私をパーティーに連れて行ったクラスメイトだ。一瞬息をのみ、無言のまま立ち止まる。
「今日なら、戸川さん、大学に来るかなって思ったんだけど。会えてよかった」
会えたことを喜んでいるとは到底思えない表情で、瞬き一つしない鋭い視線を向けて来た。創介さんと一緒にいるようになって、私は意識的に彼女と出くわさないようにしていた。一番、会いたくない人だった。
「最近小耳にはさんで、本当にびっくりしちゃって。まさか、戸川さんがそんなタイプの人だと思わなかったから」
何も言葉を発せないでいる私に、彼女は一歩一歩、近付いて来る。
「創介さんと、会ってるんだってね」
私の真正面で歩みを止めると、睨むようにして言い放った。
「どんな手を使ったの? 詳しく教えてよ」
私よりほんの少し背が低くて愛らしい顔をしているユリさんが、そんな面影もないほどの険しい顔で私を見る。
「絶対捨てられると分かっていても、それでも一緒にいたいほど創介さんに溺れちゃったわけ? そうだよね。創介さんの身体、スゴイもんね。初めての快感にやみつきになって、理屈より身体が求めちゃう?」
汚れ一つない真っ白なコートに、キャメル色のバッグ。整えられた髪と綺麗な肌を持つ彼女は、どこからどう見ても良家のお嬢様だ。そんな彼女の口から出たとは思えない言葉に、私は思わず目を伏せる。その口調は、敵意に満ちていながらもどこか憐れみも滲んでいた。
「だけど、戸川さんは創介さんのこと全部分かってるの?」
黙ったままの私に、ユリさんは歪んだ笑みを向けた。