雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
背中に感じる創介さんの胸板を感じながら、ひたすらにじっとしていた。息をするのも気を使ってしまうくらいだ。
「……なあ、いつになったら慣れるんだ? さっきの酔って甘えて来たおまえはどこ行った」
「だから、そう言うこと言わないでくださいっ」
お湯からただ顔だけを出して、創介さんに抗議する。
「雪野」
背中にあった温もりが離れたと思ったら、創介さんの膝にまたがるように座らされた。
「この方が、ちゃんと顔が見えるよな」
「それは、そうですけど、でも……」
間近にある創介さんの顔がどうしても視界に入る。少し濡れた黒髪が、いつも以上に大人の色気を放出させて。
そこから視線をそらせば、今度は何度もキスした唇が目に入って――。
「寒くないか? それとも、そろそろ熱くなって来たか?」
「大丈夫です……」
心はそれどころじゃない。
本当は、身体を隠すために湯の中に潜らせているから、のぼせてしまいそうになっている。でも、お湯から出るわけいは行かない。
「顔が真っ赤だ。のぼせてるんじゃないのか?」
身体なんてもう何度も見られているのに、こんなに恥ずかしいと思うのは、ここが外だからだろうか。
「大丈夫です」
「おまえの大丈夫は、全然大丈夫じゃないってことは分かってる」
「え、え……っ?」
突然腰を持ち上げられて、お湯の中から身体が晒された。
上半身が出されて、火照った身体に冷気がさす。その冷たさが気持ち良くもあるけれど、私を見上げるように見て来る創介さんの視線が痛い。
咄嗟に胸を両腕で隠しても、すぐにその腕を掴まえられた。
「また、身体が冷たくなったらまたつかればいい」
私の背中に創介さんの手のひらが添えられて、胸を隠していた腕を創介さんの肩へと誘導される。
静かな夜の雪積もる中でこんな風に見つめ合う状況に、まるで夢でも見ているような気持ちになる。
「――このまま、」
私の腰と背を支えながら、創介さんが見上げてくる。
「時間が止まれば、いいのにな」
あり得ないことを願ってしまうほど、創介さんも苦しさを感じているのだろうか。
瞬きもせず見つめ合えば、引き寄せられるように唇を重ねた。
唇を重ね合わせ、吐息を零す。白い息が二人を包み込んだ。
その白い息に、ずっと隠れていたい。
流れて行く時間に意識を奪われたくなくて、ただ触れる唇だけを感じていた。