雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
部屋の真ん中に応接セットがしつらえてある。
「とりあえず座りましょうか」
先に腰掛けると、凛子さんが遠慮がちに斜め隣のソファに腰掛けた。
「早速ですが、一つ、聞いてもいいですか?」
こんなホテルの一室で世間話をする気にもなれない。すぐにでも本題に入りたかった。
「はい」
「単刀直入に聞きます。凛子さんは、この結婚をどうお考えですか?」
真っ直ぐにその目を捉える。
彼女の本心が聞きたい。その答えによって、俺たちは仲間になれる。
「どう、とは……」
「僕たちは顔見知りという程度の間柄だ。個人的に会ったこともないろくに知らない男と結婚をする、ということですよ。凛子さんは嫌ではないのですか? あなたにはあなたの思いがあるでしょう」
凛子さんの目がゆらゆらと揺れる。
「私は……もうずっと、創介さんと結婚するものだと両親に言われて育ちましたから」
「でも、大人になるにつれそれに疑問も持つようになるでしょう。こんな風に無理やりに決められたレールに乗せられて」
一向に結婚を決めようとしないこちら側に痺れを切らせていたからと言って、娘に身体を差し出させるようなことまでされて。怒りを覚えるのが当然だろう。
「私は、創介さんのことを知らないわけではありません。小さい頃から存じ上げています。年に一度、お会いできるのをいつも楽しみにしていましたから」
凛子さんが、小さいけれどはっきりとした声でそう言った。
「それは知っているうちに入らない。あなたは、俺のことを何も知らないだろう?」
装っていた態度を脱ぎ捨て、さきほどより低い声で言い放った。
「俺がどうしようもないくらい酷い男だったらどうする? あなたのような人が想像もつかないような最低な男だとしたら。それでも、俺と結婚出来る?」
「創介、さん……?」
その目に怯えが浮かぶ。