アネモネ
「どんな形であろうと、姉は帰ってきて欲しいと別れ際に言いませなんだか?」
「、、、憶えております」
「生涯一人の人しか愛さないと、言いましたやろ」
そ、そうか、、確かに透子はそう言っていた、、
「私は、何度も姉からその話を聞いております、
あんな器量良し、嫁の貰い手など何処にでもあります、なのに、、、姉が不憫で仕方がないのです、」
俯き、静かに瞳を濡らす様が見てとれた、、
「、、、だから、透子さんは結婚もせずに、、」
「そうです、早瀬さんが帰るのをひたすら待ち続けておりました」
「私が生きて帰っていた事を、
透子さんは知っていたのですか?」
「知るはずもありません。40年間此の屋敷から出た事がないのですから、家族以外の誰にも会っておりませぬ」
あぁ、私はなんて酷い事をしてしまったんだ、
良かれと思いした事が、
そこまで彼女を追い詰めていたとは、、
許して貰えぬかも知れぬが、
精一杯頭を下げて謝るしかない、、
「すみません、、
それで、、透子さんの容態は?」
私の問いかけに、
さっきまでの強気な威勢が即座に崩れた、、
「、、、姉は、、先週、身罷りました、、」